『こっこ屋』さんぽ1

5月に発売された『こっこ屋のお狐さま』

めでたく重版出来です!

 

で、かねてから書こうと思っていたのですが、

『こっこ屋』の舞台について

ゆるーく紹介してみようかと思います。

 

まず作品の中心、こっこ屋は『黒狐』の音読み『こっこ』からきてます。

『黒狐屋』で便利屋をはじめたけれど字面のとっつきにくさから客が入らず、

社長黒木が思案のすえ『こっこ屋』というポップな店名に変えたという経緯です。

それで大繁盛してるかというと……うーん……その点はちょっと疑問ですが……。

 

こっこ屋の所在地は、名古屋市南区笠寺観音近くの狐坂ということになっています。

昔は京と鎌倉をつなぐ鎌倉街道だった場所です。

坂を下ると、旧東海道の笠寺一里塚に出ます。

 

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ですがこのあたり、細い道が入りくんだ住宅街です。

めっちゃ迷います。

少なくとも作者は何度行っても迷ってます。

 

まあ、まさか「物語の舞台の狐坂行ってみよう!」なんて

奇特な方はそうもいらっしゃらないとは思いますが、

もしも行かれる場合は、住んでいる方のご迷惑にならないよう、迷わないよう、

笠寺観音周辺~一里塚の散策にとどめてくださるようお願いします。

 

そして笠寺観音

 

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正式には天林山笠覆寺というらしいですが、

作中でも触れたように、

昔、寺が荒れてご本尊の観音さまが野ざらしになっていたところ、

近隣に住む気立てのいい娘さんが自分の笠をかぶせてあげ、

それを見た通りすがりのセレブな貴族の坊ちゃんが

ズキューンと一目惚れ、めでたく結ばれるという、

笠地蔵ロマンス版の伝説が残っているところです。

 

その気立てのよい娘さんが玉照姫さんといって、

じつに絵に描いたような玉の輿に乗ったというわけで、

笠寺観音には縁結びの御利益があるとされています。

 

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そしてお相手のお坊ちゃんですが、

平安時代の藤原兼平という人で、

お父さんは日本で最初の関白になった人(基経)という、

冗談ではないマジのセレブでした。

そりゃ荒れた寺のひとつやふたつ、再建し放題ですわ。

 

じつは名古屋の南区周辺には、平安から鎌倉時代

貴族とか武士とかの伝説が意外と多いです。

続編で出そうかなと思っている藤原師長もこの近くに流されているし、

あの源頼朝なんか産湯つかっちゃってるし、

弟の範頼は子どものころ、笠寺観音の宿坊だった東光院に隠れ住んでました。

(ちなみに東光院には、あの宮本武蔵も一時期住んでて、

武蔵自作の木刀や書が残されてます)

 

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どうやらそのころ、名古屋の繁華街は熱田からここらへんだったようです。

もっと遡ると、弥生時代の遺跡が笠寺観音のすぐ裏にあります。

見晴台遺跡というところで、周囲より高台になっていて、

ちょっとタモリさんに歩きながら

「おお~、河岸段丘ですねぇ」

とか言ってもらいたいような地形です。

そんな昔から人が住んでいたお土地柄なんですねー。

 

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現在は公園と資料館があって、出土した土器や、

集落をとりまいていた環濠あとなどを見ることができます。

 

さて、ざっと『こっこ屋』のご近所をめぐってみましたが、

いかがでしょうか?

いまはふつうの住宅街で、門前町のにぎわいも往時のようではありませんが、

近くには富部神社などもあり、歴史的に価値のある面白いところです。

 

次は作品に出てきた名古屋のほかの場所もご紹介しますー。

あくまで予定ですが……。

(なので、いちおう『こっこ屋』さんぽ1です)

作品の舞台に触れて、より『こっこ屋』に親しみを感じていただけるといいなと思っております。

 

こっこ屋のお狐さま (小学館文庫キャラブン!)

こっこ屋のお狐さま (小学館文庫キャラブン!)